もう一度観たい映画はけっこうあるかもしれないけど、もう一度観たいと思うテレビの2時間ドラマは、そうそうないと思います。
そんな中で、もう何年も前から 「もう一度観たい」 と思っているドラマがある。
「風よ 父よ 明日へ」 という1990年に放送されたドラマです。
オフロード・バイクのエンデューロレースをテーマにしたドラマなんですが、エンデューロとはオフロードの耐久レースというかラリーといった感じのレースで、一般的にはあまり知られていないマイナーな競技になるのかな。
モトクロスやロードレースに比べて華やかさがないエンデューロをテーマにしたドラマや映画はこの作品以外に見たことも聞いたことも無いような気がするので、とても貴重な作品です。
「風よ 父よ 明日へ」 が放送された当時は自分も愛車のKDX200SRでちょっとエンデューロをかじったことがあったので、興味津々で観ました。
主役は藤 竜也さんで、阿藤 快さんや嶋 大輔さんも出演していたように思います。
ストーリーはうる覚えなんですが、舞台は北海道で主人公の藤 竜也さんはヤマハのXT200に乗っていたと思います。
藤 竜也さん演じる主人公はオフロード好きの元炭鉱夫で、炭鉱の仕事に誇りを持っていましたが、石炭の需要が先細りする中、閉山により職を失いそれからというもの、つく仕事つく仕事打ち込めずにいて、深夜のコンビニでアルバイトとして生計たてているといった調子。
そんな主人公に妻や息子が自分をいいようには思っていないことは薄々気づいている。
モヤモヤした気持ちの毎日の中で、息子がまだ小さい時に出場してリタイヤで終わった日高で行われるエンデューロレース、HTDE(HIDAKA Two Days Enduro)にもう一度チャレンジしたい気持ちは持っていた。
深夜のコンビニのバイト先で、若者達にボコられ、それが原因でバイトもクビになり、そんな主人公に妻も愛想を尽かし、離婚を言い渡さる。
石炭会社の元同僚でバイク仲間だった阿藤 快さんが会社の勧めで転職した先の蘭の栽培事業に打ち込めている姿に自分を振り返り、日高エンデューロ・レースに出場することを決意する。
最後に息子に父親として、そして男として、自分が闘っている姿を見せる為に。
エンデューロ当日の会場には多くのライダー達が集い、その中に嶋 大輔さん演じるちょっとチャラいライダーがいた。
BOOWYの「ONLY YOU」をウォークマンで聞き、鼻づさみ歌いながら、オフロードレースなのにオンロード用のブーツを履いての登場だったと記憶してます。
そんな嶋 大輔さんもなぜか主人公家族と久しくなっていた。
エンデューロ・レース、特にHTDEは過酷な部類のエンデューロ・レースにあたり、完走するのも難しいレースです。
主人公のヤマハXT200は当時でも古いバイクで非力さを感じます。主人公自身もオフロードは好きだけど、歳も歳(40歳くらいといった設定だと思います)で、凄いライディング・テクニックを持っている訳ではない。
エンデューロ・レースは速さよりも、いかに過酷なコース状況を観察して無理せず自分のペースを見失わずに走破するかがものを言います。
レース1日目、若いライダー嶋 大輔さんは自分を過信しすぎてコースを外れて崖から落ちて足を骨折してリタイアしてしまいます。
レース2日目の終盤、主人公もマシンもボロボロになりながら走り続けますが、ついにXT200がエンジントラブルで動かなくなります。
でも、主人公は動かなくなった重いマシンを押しながらゴールを目指します。
ゴール会場では、次々に参加ライダーがゴールする中、なかなか姿の見えない主人公に妻や息子も不安がよぎります。
その時にフラフラになりながらマシンを押してゴールに向かってくる主人公の姿が見えます。もう彼がコース上に残っている最終のライダーです。
体力も消耗しきって、ゴール前で主人公とXT200は倒れます。もうマシンを起き上がらせる力もない。その時に「お父さん」と息子が駆け寄ります。
「助けたらダメだ、失格になるぞ!」と先にゴールした仲間のライダーに言われましたが、それを知りながら息子は動かないXT200を父の後ろから押します。
主人公もそれを承知で息子と共にマシンを押して二人でゴールします。
結局、オフィシャルに手助けを受けたので失格を言い渡されますが、主人公の藤 竜也さんは、息子を見つめて満足そうに笑みと涙を浮かべます。その姿を見ていた妻も涙します。
レース後、結局は主人公と妻は離婚してわかれることになったように思うのですが、息子がもう一度やり直してほしいような表情をしていて、もしかしたら、また家族で再出発するのかなぁ・・と想像できそうなシーンでドラマは終わったかと思います。
ちょっとでもエンデューロ・レースをかじった者としては、レースのハードさや、ドロドロのオフロードコースを動かなくなったマシンを押す重さは身に染みてわかります。自分も主人公くらいの歳になって、普段、会話も少なくなった子どもに、父親として何か語らずとも背中を見せてやれる事があればと最近思うようになりました。
「風よ 父よ 明日へ」は2時間ドラマなので、DVD化してないでしょうから、もう一度見ることは叶わないでしょう。
当時、ビデオに録画した記憶はあるのですが、ビデオテープがどこにあるのか不明です。ビデオテープがあってもデッキがないか・・・。残念。